工事までの取組み方やシステム


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現状見る、診る

長年の”戦い疲れ”・・・劣化様々。

 

1-1 築年数20~30年の間に何が起きるか?・・・大切な時期。

人の住む建物(戸建・アパート・マンション)で最も大事な要素は『風(雨)雪に耐えること』。

職人的には「雨仕舞」と言いますが、新築からかなり時間が経ち、今まで当たり前だった雨仕舞に、ちょっとした変化を見つけるはずです。雨漏り被害まではまさかと思いますが、その前兆のような一つまたは複数の変化です。

 

木造もコンクリートも、戸建てもアパートやマンションも、また一流メーカーでも、そうでない場合でも、築後20年から30年の10年間はそれが最も現れる時期です。

では、何がどう変わりどんなことが起きるのでしょうか? 

具体的な事例を見ながら進めてみましょう。 

 

1-2 ”見る、診る”レベルの違いで、その後(寿命)が決まる。

 

左はサッシ下端の隙間から浸水したことで壁が腐ってしまった様子です。

寒い地方では浸み込んだ水分が凍結し、膨張することで壁材を壊します。それが繰り返され、壁の内側や内装材まで傷めます。これを凍害といいます。

 

ここまで損壊が進むと、さすが「パテ補修」では済まされませんが、見かけないワケではありません。

下のケースは、他社の「パテ補修→塗装」で、数年経過後の例と、当社のセオリー「一部貼替え→防水シール→塗装」の例とを見較べていただきます。

 

パテ補修・塗装後、数年経過でこのように

パテ補修はいわゆる「絆創膏」です。これでは短期間で浸水を許し、腐食も再発します。

残念ですが、こういった”その場しのぎ”のケースが目に余ります。

貼替中の当社例。

色違いのところが新しく貼替えた部分で、その上と左右に1㎝程度の隙間を空けておきます。

その隙間に防水シール材(コーキング)を充填し、塗装工程に進みます。


 

1-3 その結果と修繕のセオリー。

窓下やサッシ周りの凍害。その標準的な工法(セオリー)です。

凍害の現況→

壁材の一部貼替え→

防水シール充填→

塗装(完工)。


 

1-4 屋根

屋根の診立てを行い、最適な修繕方法を決めなければなりません。

葺材はスレートと言いますが、天然の堆積岩を模した人工物で『コロニアル』といった商品名でもおなじみです。下の3点ともに築後25年前後ですが、傷み方は多少異なります。したがって、修繕方法は2通りに分かれます。

 

これらのドキュメントは『ビフォーアフター』や『施工A to Z』で詳しくご覧いただけます。

 

表面が汚れ、変色もかなりあり、棟板金や破風材も腐食していて、いかにも老朽化が進んでいるように見えます。

保全塗装 

棟(屋根の最上部)板金部分からスレート材が脱落したり、部分的に欠けたり、全体的に脆くなっている印象です。

カバー構法 

表層が所々消失し、カビやコケも目立ちます。見るからに撥水性(雨水をはじく性質)が落ちているように見えます。カバー構法 


『カバー構法』のビフォーアフター

スレート材の脱落や損壊がここまで進むと、もはや部分補修や塗装の組み合わせでは適いません。

そもそも雨漏りを防ぐのはスレート下層のルーフィングというアスファルト形質のシート材で、その防水層を堅牢なスレート材がガードしていると理解してください。したがって、現段階で雨漏りは起きなくても損壊は間違いなく進み、防水シートも順追って突破されることになります。そうなったら?・・・想像するまでもありませんね。 

 ※一般にカバー(被せ)構法は「工法」の文字が多く使われているようですが、現況を残したまま鋼板製品を被せますので、当社では「構法」という名称を用いています。

 

屋根下の破風、軒天、樋も

屋根がそうであれば、その周り(↙下)も傷んでいるのが一般的です。

新しい材料にそっくり取替える方法が手っ取り早いかもしれませんが、使えるものやカバーできる方法があれば用います。

費用の節約からも大切なセオリーです。 

 

破風の腐食→

部分交換→または→

板金カバー→

防錆・防カビ塗装。


 

1-5 外壁

外壁の劣化は左下↙のように指で触ってみれば分かります。粉が付く場合は表層が風化し、本来の撥水が十分に果たせない状態を現わしています。これを「チョーキング」と言いますが、修繕必須のサインです。

 

下は「窯業系サイディング」という外壁材で、近年最も使われる建材の事例です。

このパネルを一定間隔に貼り、その目地に防水シーリングを行うのが施工法です。目地のシールをコーキングとも言います。

材料は弾力性のあるシリコン質のものですが、築後20年前後から萎縮やひび割れ、硬化といった劣化が目立ってきます。

劣化にともない、壁内部に浸水を許し、目地はもとより周りの壁材や内部構造まで傷めます。

 

チョーキング→and

塗膜の役割低下、再塗装のサイン。

腐食範囲の壁材取替え⇒

壁内のシートや断熱材も取替えます。

目地シールの萎縮や亀裂⇒

防水の役目を果たせない状態。

防水シーリング⇒

目地をしっかり塞ぎます。

壁材損壊~目地硬化⇒

浸水した雨水が凍結し周囲を損壊。

壁ビス止めとシール済み。

この上から水性塗装し完成です。


 

1-6 階段 <外部型の鉄骨階段>

アパートの階段通路の多くは建物の外部にあり、鉄骨構造が一般的です。また屋根や庇がかかってない場合も多く、雨や雪を直接受けることで、建物の中では最も早くダメージが現れる個所です。

 

鉄骨階段と手摺壁改良のビフォーアフター

↑左上が現状ですが、冬場に融雪剤を何度か使用したようです。劣化が早まった原因のひとつです。

手摺壁も内部通気が悪くそれによるカビや腐食も目立っています。

 

通路床や踏板のモルタルを左官コテで補修し、鉄材はケレン(サビ落し)⇒防錆塗装といった一般的な修繕工程ですが、手摺バーと踏板に防滑金物を取付けるほか、手摺壁の腐食を抑える独自の改良工法を採るなど、修繕領域を超えた対策を施しています。

 ☆この章後半の<3-3 独自の改良工法>でも取り上げています。 

 

見た目にも不安感→

みちがえる光景→

防滑アルミも取付け、安全安心。


 

1-7 バルコニー

バルコニー、ベランダ・・・名称も形状も様々ですが、外部に曝される厳しい環境は同じです。

構造的な要求として屋根同様、雨や雪に対ししっかりした防水力が前提です。

 

下は、1階屋根部分に乗った2階のバルコニーです。すでに防水層が破綻し、階下の部屋に雨漏りが起きています。

一般の木造住宅でバルコニーの床がタイル、という組み合わせに問題があったかも知れません。

残念ながら、やや大掛かりな”手術”にならざるを得ない症状です。

床下材の膨張でタイル面が波打ち状。

←左・↑上)床も手摺壁上部までも腐食している様子。

損壊はタイル面の下地層のシートや合板まで達し、特に勾配下方の溝やドレン周りが酷い状況です。

バルコニーの床は屋根と同じ防水力が求められます。


前のようなタイル床に復元するのではなく、温度変化に柔軟でコスパも優れるシート防水に。


 

1-8 基礎・外構

大手メーカーの軽量鉄骨造りの事例で、木造と違い土台がなく基礎コンクリートに直接鉄柱を差し込むため、「水切り金物」を取付けません。水切りとは基礎巾木が汚れないよう形状加工した鋼製材です。

これがないと、外壁の内側からの結露や外側から伝ってくる水滴が、その下の基礎コンクリートの巾木(立ち上げ部分)に染み着き、それが左下のように汚く定着してしまいます。

 

敷地が土むき出しの場合、雨の勢いで基礎巾木に泥はねし、基礎コンクリートが赤土色に染まってしまいます。これを「泥袴」と言いますが、こうなると簡単には戻せなくなってしまいます。

泥袴を防ぐには右下のように砂利敷設か舗装し、泥はねの汚れを抑える塗装を行います。

同じように壁からの水滴が原因の場合も塗装が有効です。しかし、さらに効果的なのは水切り金物を後付けする方法で、このタイプの構造ではお勧めしたい改良方法です。

 ☆<3-2 改良例>でも取り上げています。

基礎コンクリートの汚れが目立つ→

専用塗装や敷地への砂利敷設も効果的。


鉄柱の根元も守りましょう。土間コンや束石の亀裂補修はしっかりと。

鉄柱腐食を早める亀裂→

鉄筋も入れて再建→

完工。角柱は特に大事。

 



2

見えない、だからこそ診る。

隠れた内部こそ問題を抱えている場合が多く、手間も費用も・・・

2-1 この壁のキズをどうみますか・・・!? 

浅いか深いか?狭いか広いか?キズの程度を診なければなりません

 

 

 腐食範囲の壁材を貼替えます。

左下は貼替え前に腐食の程度や範囲を探るために悪くなった部位を掻き落としているところです。

まだ途中ですが、最終的には右下のように、タテ・ヨコ1㎡程度が貼替え範囲になりました。

 

掻き落とし中。腐食はかなり拡い範囲に。

壁材の貼替え後に目地の防水シーリング→塗装で完。


 

2-2 これは?内側から何やら気配(ケハイ)・・・!? 

壁の下端が多少傷んでいるように見えるだけですが、何の気配?

 

↑上は↙左の階段上り壁の拡大。

診立てですが、シロアリによる蟻害です。

壁内部の木枠がやられているので、一般の方には見つけにくい被害です。

幸いなのは、手摺壁が建物本体と接触していないため、侵食範囲が部分的で、修繕も一部の木枠や壁材に限られていた点です。 

 


被害範囲を剥がす→

通気不良も一因→

防蟻薬剤も塗布し→

再建・長寿命化完了。


 

2-3 この天井滲み跡は・・・!? 

この状態(↙左下)だけで全ては診立てられませんが、ただならぬ滲み跡である事は確かです。

外装を調べる場合、通常は建物外側の目視ですが、こういったケースでは室内側からバルコニーの防水検査も必要です。

 

結果的に「シート防水再建」が選択されましたが、集合住宅では<防水費用×世帯数>の関係もありますので、念のため滲みのない他のバルコニーも検査を勧めます。 ※結果的に全バルコニーの修繕工事となりました。

 

(←左)天井板に染み跡が拡がっていますので、一般的にはその部分の貼替えか、塗装です。

しかし、室内側から再調査した結果、バルコニーの防水修繕が必要との診断になりました。


(↗右上)実際に室内側から調べたバルコニー内側の様子で、ドレン周りやシート材の腐食が判断できます。

(↓下)床材の立ち上げ部分ですが、下地の木板まで損壊が進んでいます。これにより天井の滲み跡の原因が確定できます。

防水層も下地も破綻→

下地合板から再建へ→

シート防水の完成。

 



3

再劣化を抑える改良法。

独自の改良工法でさらに長寿命化へ 

↑上のイメージは、1~2階の中間によくある幕板という部材で、

その上端部分に雨水が溜まったり、壁との間に浸み込み、

凍害などで損壊してしまったケースです。

↑施工後の画像は、

時間が経ってまた前の状態に戻らないよう、

上端部を水切金物でカバーした事例です。

このように、再生や復元を超えた次元の

プランも含め、プレゼンテーションいたします。

 

 

3-1 改良例>壁内の通気を改善し腐食を抑える。

近年は外壁材と内側の間に空間と上下に開口部分を設け、内部に溜まった結露や湿気がそこから抜けるよう考えられた『通気工法』が一般的です。

外壁材はパネル形状で、それを内側の胴縁枠に取付け、断熱、耐火層、そしてクロスの順で構成し室内とを境にしています。

しかし、下のような階段・通路などの手摺壁では、通気や断熱への備えは少なく、しかも鉄骨など金属類が多用されていることもあって、錆や腐食(蝕)に対し脆弱な環境に置かれています。建物全体の中で最も心配な部分と言えなくもありません。

 

(↙下)手摺壁の通気不良による悪影響の様子と『改良工法』の施工例です。

寒暖差が大きなとき、下(2段下の左)のように熱の伝わりやすい金属表面にたくさんの水滴が溜まります。改良はこれらを自然に排出するしくみで、通気器具を手摺壁の上と下とを平行に切除して取り付けます。⤵右下がその実例で、下側の通気器具は外側に設けています。

2階通路壁の腐食・床の損壊の様子と改良後。

左下↙)手摺壁を剥がした壁の内部。上端の金属部分に大量の水滴が。※別の物件で冬場に撮影。

中下↓)手摺壁上端の笠木の下に取り付けた通気器具。これから壁材との隙間にコーキングを行うところです。

右下↘)通気改良の完了。笠木=手摺部分と外壁を塗装して完成です。

 

 

3-2 改良例>水切金物を設け、基礎コンクリートの汚れを防ぐ。

左下↓)一般的な在来木造では、基礎コンクリートと外壁の間に予め「水切り」という金物を平行に取り付け、壁から流れ落ちる雨水が基礎に直接伝わり落ちないよう外側に導く働きをさせています。

しかし、軽量鉄骨造りではこれが無い場合があり、その事が要因でご覧のようなタテ状の汚れが染み付いてしまいます。

基礎自体は高さが40㎝程度あり、人で例えれば「足元」にあたりますので目につきやすい個所でもあります。

この汚れを抑える専用塗装もありますが、経年で徐々に前のようになってしまいます。

 

改良工法は、塗装の前に下2番目のような形状板金を壁と基礎の間に差し込み、壁からの雨水をそこに直接伝わり落ちないようにします。右下は完成からしばらく時間が経った後に撮ったものです。

 


 

4

リデザインプレゼン。

再生設計・仕様・見積・カラーPLAN⇒プレゼンテーション。 

4-1 調査・診断のまとめ 

何がどのように起き、これからどうなって行くか? そのことでどんな災いに至るのか? 次のルーチンではそんな含みも踏まえ、調査・診断の結果として分かりやすくまとめます。そして、このサマリーはお客様はじめ、関わる全ての人々で共有いたします。

 

そのセオリー(修繕方法や改良工法の標準化)では、数多ある実績画像を多用することで、均質で誤りの余地のない現場連携を日常化しています。口頭や記述より(下の写真のように)ビジュアルに重きを置くのはそのためです。

 

プゼンテーション(ご提案・説明)の際は、右のようにファイルにまとめたものを準備いたします。


4-2 リデザイン(再生設計と修繕セオリー)+見積 

何をどういったやり方で行うべきか?

精細な調査・診断を基に積算し、お客様に工事予算とセットでプレゼンテーションいたします。

 

ご予算に一定枠がある場合は、施工項目に優先順位を設けたり、選択可能なように分別したり、また充分な話し合いを前提にし、双方が納得感をもって先に進めるようにいたします。

 

↘下は<修繕仕様>と言い、見積書と一緒にお出しするメイン・ツールで、右上のように冊子に綴っています。

お客様が企業やご家族や個人にかかわらず、関わるすべての方々に具体的に共有いただくため、独自に開発したプレゼンテーション・ツールです。

また、たくさんの工事実績からセレクトした『ビフォーアフター』集は、印刷物でも用意しています。

 

4-3 カラーPLAN 

◆住宅やアパートのほとんどは、最終工程で再塗装を行います。アウトラインだけは変えられませんが、塗装は自由自在です。プロのクリエイターと一緒に、カラーや色数やそのラインのリデザインにトライいたしましょう。

 

◆通常は、契約後かそれを前提に右下のように現状の建物とを特殊合成したパース(完成予想図:標準では4点)をプレンテーションいたします。その再現性のレベルは<ビフォーアフター>のページで較べていただけます。

 




 

1 現状を見る、診る。

2 見えない、だからこそ診る。

3 再劣化を抑える改良法

4 リデザインプレゼン。

 

 いかがでしたか?”よみがえる、みちがえる” までの進め方でした。 

その実績は ビフォーアフター でお確かめください。